病院でフロセミドっていうお薬を処方されたけれども、
- フロセミドの効果は?
- 飲ませるタイミングはいつ?
- 飲ませ忘れてしまったらどうする?
- 副作用は何があるの?
そんな疑問に現役の救急獣医師がわかりやすくお答えします!
このページで解説するお薬は次の名前で呼ばれることもありますが、どれも同じお薬を表しています。
解説するお薬の一覧
- フロセミド
- ラシックス
この記事を読むことでより安心して、安全にフロセミドを使うことができるようになります!
フロセミドってなんのお薬? 概要説明
フロセミドはおしっこを出して体の余分な水分を減らすためのお薬、いわゆる利尿薬です。
特に心臓などが悪くなって、肺やお腹に溜まってしまった水を取り除くためによく使われます。
おしっこをたくさん出す→体の水分が減る→肺やお腹に溜まった水も減る。という仕組みで余分な水分を外に出してくれます。
他にも、有害物質を体からおしっことして出したいときや、余分な水分をなくしたいときにも使われます。
フロセミドはラシックスという製品名で、人のお薬として販売されています。
動物用の飲み薬は販売されていないため、獣医師が自分の知識と経験から人のお薬を使う、いわゆる「適用外使用」がされているお薬です。
フロセミドの飲ませ方、タイミング
指定された量を指定された回数 (大体1日1回~3回) のませてください。食前、食後はどちらでも大丈夫です。
重症度などにより飲ませる量や回数が変わるため、獣医師の指示に従ってください。
フロセミドを飲ませ忘れたとき
フロセミドを飲ませ忘れてしまった場合、数時間後に気づいたならばその時にそのまま飲ませて大丈夫です。
しかし、次回の投薬が近いときには1回飛ばして次回のタイミングに飲ませてください。
忘れてしまったときでも2倍の量を飲ませるのはNG!
副作用が強く出てしまう可能性があるので、いつもと同じ量を飲ませるようにしましょう。
フロセミドの副作用、飲むときに気をつけるべきこと
飲む上で気をつけるべき副作用がいくつかありますので、これらの症状が出てこないか注意して使用しましょう。
フロセミドの副作用
フロセミドの副作用として、次のものが起こる可能性があります。
フロセミドの副作用
- カリウムの低下
症状:筋力の低下(頭を持ち上げられない等) - ナトリウムの低下
症状:元気食欲の低下、外からの刺激の反応の低下 - 脱水
症状:元気食欲の低下 - 腎数値の上昇
症状:元気食欲の低下 - 難聴 (非常に沢山飲ませた場合)
フロセミドは腎臓に働いておしっこの量を増やすときに、カリウムやナトリウムなどの電解質も一緒におしっことして出してしまします。
多少ならば体は対応できますが、ひどくなると元気がなくなったり、神経症状が出てきてしまう可能性があります。
予防には食事をしっかりと食べることが大事です!
また、おしっことして体から水分を取り除いていくため、脱水が進行してしまう可能性もあります。
フロセミドを使っているときはお水を切らさないようにして、犬さんや猫さんがいつでもお水を飲めるようにしましょう。
心臓が悪く、体にお水が溜まっていても、基本的に飲ませるお水の量は制限しなくて大丈夫です。
また、発生は稀ですが非常に沢山の量 (通常量の5~10倍程度)を飲んでしまった場合、難聴の症状が出ることもあります。(参考文献3)
基本的にこれらの副作用は、お薬を中断、減量すると改善していきます。
しかし、副作用が出たからといって、自己判断でお薬の中断をしないようにしましょう。肺水腫などのもともとの病気が悪化、再発するリスクが上がります。
副作用が現れたら、かかりつけの獣医師に相談するようにしましょう。
自己判断でのフロセミドの中断、減量はNG!
飲ませるときに注意が必要な場合
以下に当てはまる犬さんの投薬は注意が必要です。投薬する前に獣医師としっかり相談をしましょう。
注意が必要な場合
- 腎臓が悪いとき
- 脱水をしているとき
- 下痢やおう吐をしている時
- 腎臓が悪いとき
- 脱水をしているとき
- 下痢やおう吐をしているとき
副作用が強く出てしまう可能性があります。
特に腎機能が悪化してしまう可能性があるので、これらに該当する場合は定期的な検診を受けるようにしましょう。
飲み合わせ
次のお薬と一緒に飲むときは注意が必要です。これらのお薬を飲んでいることを獣医師に伝えて忘れていないかもう一度確認しましょう。
併用注意の薬
- アミノグリコシド系抗生物質
ゲンタマイシン、カナマイシン等 - ポリエン系抗生物
アムホテリシンB等
これらのお薬を使っていたときは少なくとも1日は間を開けるようにしましょう。聴覚障害などの副作用が強く現れてしまう可能性があります。
これらのお薬と併用すると、効果が減弱してしまう可能性があります。
フロセミドの作用機序
腎臓で作られたおしっこは最初は濃度が薄くできています。これを原尿と呼びます。
その後、原尿は尿細管という構造を通る間に水分を吸収して濃縮されることで、濃くて量が少ないおしっこに変化していきます。
フロセミドは濃縮過程の一部分をストップすることで、おしっこを薄くし、量を増やします。
まとめ
以上、フロセミドに対する説明でした。
フロセミドは、利尿薬として体に溜まった水分を逃がすために使われています。
特に現場では心臓病などで肺やお腹に水が溜まってしまった犬さんや猫さんに使われることが多いです。
尿量が増えるということは脱水が起きやすい状態なので、脱水が起きないようにお水をしっかりと飲めるような環境が大切になってきます。
- フロセミドは利尿のお薬で、心臓病や有害物質の排泄などに使われる
- 1日1回~3回、獣医師に指定された回数飲ませる
- 副作用は、脱水や腎機能の低下、電解質異常に注意
- 長期投与するときには定期的な検診が必要
まとめ
皆様の参考になれば幸いです。
- この記事は動物病院で薬を処方された飼い主様に、その薬について知ってもらうための記事です。特定の商品の使用を推奨する意図はありません。
- 飼い主様の自己判断での通販などによる薬の入手および投薬、並びに投薬の中断は一切推奨いたしません。獣医師の処方、指示に従って利用するようにしましょう。
- 適応外使用については個々の症例に合わせて、獣医師の判断のもとで使用されています。予想される効果や副作用について獣医師としっかり相談してから利用するといいと思われます。
- 薬の使用方法について獣医師一人一人考え方は違います。獣医師がここに書いてない薬の使い方をしても、それが間違っているというわけではありません。疑問に思ったらかかりつけの先生に質問してみましょう。
参考文献
- ラシックス添付文書、日医工株式会社
- Giorgi ME, Mochel JP, Yuan L, Adin DB, Ward JL. Retrospective evaluation of risk factors for development of kidney injury after parenteral furosemide treatment of left-sided congestive heart failure in dogs. J Vet Intern Med. 2022;36(6):2042-2052. doi:10.1111/jvim.16571
- Oishi N, Talaska AE, Schacht J. Ototoxicity in dogs and cats. Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2012;42(6):1259-1271. doi:10.1016/j.cvsm.2012.08.005
- 竹村直行.イヌの僧帽弁閉鎖不全症 : 診断・管理の理論と実際.ファームプレス. 2018.
- 大草潔、他.犬と猫の治療薬ガイド2023.EDUWARDPress.2022
各2023年2月15日取得