犬と猫のお薬解説 痛み、炎症のお薬

犬猫お薬解説-ガリプラントの効果や副作用、使い方を現役獣医師がわかりやすく解説!

2023年1月17日 なんたべ

病院でガリプラントっていうお薬を処方されたけれども、

  • ガリプラントの効果は?
  • 副作用は何があるの?
  • 飲ませるタイミングはいつ?
  • 飲ませ忘れてしまったらどうする!?
獣医なんたべ

そんな疑問に現役の救急獣医師がわかりやすくお答えします!




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ガリプラントってなんのお薬? 概要説明

ガリプラントは犬さんの痛み止めに使われるお薬で、特に変形性関節症などの慢性関節炎や、加齢に伴う関節の痛みに処方されています。

ガリプラントの錠剤 60mgのものと20mgのものがあります。

今まで慢性的な痛みの管理にはおもにステロイドやNSAIDs (人のお薬でいうロキソニンやカロナールなど) といったお薬が利用されていましたが、これらは副作用の観点から長期利用に注意が必要でした。

ガリプラントは副作用も少なく、長期利用での安全性も確認されていることから、慢性的な疼痛に対して長期的に使やすいお薬です

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ガリプラントを飲ませるタイミング

体重1kgあたり、1.5~2.9mgを1日1回、食前にのませてください。

食後に飲ませると、吸収効率が低下する可能性があります(参考文献2,3)。

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ガリプラントを飲ませ忘れたとき

ガリプラントを飲ませ忘れてしまった場合、数時間後に気づいたならばその時にそのまま飲ませて大丈夫です。

しかし、次回の投薬が近いときには1回飛ばして次回のタイミングに飲ませてください。

忘れてしまったときでも2倍の量を飲ませるのではなく、いつもと同じ量を飲ませるようにしましょう。

ガリプラントの副作用、飲むときに気をつけるべきこと

ガリプラントの副作用

ガリプラントの副作用として次のものがあります。

ガリプラントの副作用

  • 下痢、軟便、血様便
  • 嘔吐
  • 食欲の低下
  • 元気の低下、無気力 (参考文献4)
  • 顔の腫れ、アレルギー症状
  • 血中タンパク質、アルブミンの低下

これらの症状が疑われたら、獣医師に相談してください。

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飲ませるときに注意が必要な場合

以下に当てはまる犬さん猫さんへの投薬は注意が必要です。投薬する前に獣医師としっかり相談をしましょう。

注意が必要な場合

  • 9ヶ月未満のとき
  • 体重が3.6kg未満のとき
  • 繁殖を予定しているときや、妊娠、授乳中のとき
  • 豚肉やスルホンアミドにアレルギーがあるとき
  • 肝臓、腎臓、心臓、消化器に疾患があるとき
  • 9ヶ月未満のとき
  • 体重が3.6kg未満のとき
  • 繁殖を予定しているときや、妊娠、授乳中のとき

これらのときは安全性が確認されていませんので注意が必要です。

  • 豚肉やスルホンアミドにアレルギーがあるとき

ガリプラントに含まれる有効成分や添加剤に含まれる物質にアレルギーを起こしてしまうことがあります。

  • 肝臓、腎臓、心臓、消化器に疾患があるとき

症状が悪化したり、薬の副作用が出たりする可能性があるので慎重に投与が必要です。

飲み合わせ

次のお薬と一緒に飲むときは注意が必要です。これらのお薬を飲んでいることを獣医師に伝えて忘れていないかもう一度確認しましょう。

併用注意の薬

  • ステロイド

プレドニゾロンなどの抗炎症剤

  • NSAIDs

メタカム、オンシオールなどの消炎鎮痛剤

これらのお薬との併用は副作用が強く出る事があります。原則併用はしてはいけません。

併用注意の薬

  • ACE阻害薬

フォルテコールベナゼハートアピナック

  • その他血中蛋白質結合率が高いお薬

セレニア、フロセミド等

体内での薬の分布や動態が変化して、効果が減弱してしまったり、逆に強く出すぎてしまったりする可能性があります。薬の効果に変化が出ないか注意深い観察が必要です。

ガリプラントの効果、医薬品としての承認

犬さんに対する効果

ガリプラントは犬さんの動物用医薬品として次の効果に承認が取られています。

ガリプラントの効果

  • 慢性の骨関節炎に伴う疼痛及び炎症の緩和

変形性関節症などの慢性的な症状に長期的に使うことを想定されたお薬です。

猫さんに対する効果

ガリプラントは猫さんの動物用医薬品としての承認は得られておらず、使用はすべて適応外使用になります。

いくつかの研究では猫さんに対しても副作用は少なく、安全性が示唆されています(参考文献6)。

ガリプラントの作用機序

作用機序

EP4という細胞のスイッチのはたらきをおさえます。EP4は体の中で、炎症や痛みを伝え、増幅する機能があり、この機能を阻害することで、慢性的な疼痛を抑えることができます。

体内の炎症の伝達物質であるプロスタグランジンE2の受容体の1つに、EP4が存在します。EP4はプロスタグランジンE2による疼痛や炎症、その感作を担っており、その阻害により消炎鎮痛効果を発揮します。NSAIDs やステロイドよりも下流でPDG2の作用を抑制することでより副作用の少ない疼痛緩和を行うことができます。

まとめ

以上、ガリプラントに対する説明でした。

ガリプラントは比較的最近発売された、主に犬さんの変形性関節症などの慢性の痛みに使われるお薬です。

今までメインで使われてきたメタカムやリマダイル、ステロイドなどは長期的に利用するとその副作用に悩まされてきました。ガリプラントはその副作用も少なく長期的に利用できることができるというメリットがあります。

変形性関節症では痛みを抑えて活動性を上げること、そしてそれにより関節を毎日使ってもらうことが関節の機能を維持する上で大切です。

そういったときに副作用が少なく、長期的に使えるガリプラントはとても重宝します。

痛みを抑えて、無理しない程度にしっかりお散歩!

    まとめ

    • ガリプラントは犬さんの慢性的な痛みを抑えるお薬
    • 特に骨や関節炎などからくる症状を緩和
    • 副作用はそこまで多くないが、消化器症状がでることも

皆様の参考になれば幸いです。

注意事項

  • この記事は動物病院で薬を処方された飼い主様に、その薬について知ってもらうための記事です。特定の商品の使用を推奨する意図はありません。
  • 飼い主様の自己判断での通販などによる薬の入手および投薬、並びに投薬の中断は一切推奨いたしません。獣医師の処方、指示に従って利用するようにしましょう。
  • 適応外使用については個々の症例に合わせて、獣医師の判断のもとで使用されています。予想される効果や副作用について獣医師としっかり相談してから利用するといいと思われます。
  • 薬の使用方法について獣医師一人一人考え方は違います。獣医師がここに書いてない薬の使い方をしてもそれが間違っているというわけではありません。疑問に思ったらかかりつけの先生に質問してみましょう。

参考文献

  1. ガリプラント錠添付文書、エランコジャパン株式会社、https://www.elancopet.jp/vetindex/product/galliprant
  2. DRUGBANK: Grapiprant. https://go.drugbank.com/drugs/DB12836
  3. Sartini I, Giorgi M. Grapiprant: A snapshot of the current knowledge. J Vet Pharmacol Ther. 2021;44(5):679-688. doi:10.1111/jvp.12983
  4. DailyMed, https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/drugInfo.cfm?setid=a38cc5c6-93e8-4c90-aabc-33bc8423beab#leftmenu
  5. 犬の関節炎の痛みはどうおさえる?どう付き合っていく?CLINIC NOTE、EDUWARD Press、195号、89-100頁
  6. Rausch-Derra LC, Rhodes L. Safety and toxicokinetic profiles associated with daily oral administration of grapiprant, a selective antagonist of the prostaglandin E2 EP4 receptor, to cats. Am J Vet Res. 2016;77(7):688-692. doi:10.2460/ajvr.77.7.688

各2023年1月16日取得

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