病院でアピナックっていうお薬を処方されたけれど、
- アピナックってなんのお薬？
- 飲ませ方や、飲ませ忘れたときの対処法は？
- 副作用は何があるの？
- 飲み合わせや飲んではいけないとき (禁忌)はなにがあるの？
そんな疑問に現役の救急獣医師がわかりやすく解説します！
このページではアラセプリルという成分が含まれたお薬について解説します。
次にあげるのお薬は、どれもアラセプリルが含まれた同じ成分のお薬を表しています。
- アラセプリル
- アピナック
- セタプリル
このページで解説するお薬の別名
ここだけ見れば大丈夫！アラセプリルまとめ
| 成分名 | アラセプリル |
| 商品名 | アピナック、セタプリル |
| 特徴、はたらき | 血圧を下げるお薬です。 血圧を下げることで心臓や腎臓の負担を減らすことができます。 |
| 使う動物 | 犬、猫 |
| 副作用 | おう吐、発作などの神経症状など |
| その他 |
アラセプリルは血圧を下げて心臓の負担を軽減する
アラセプリルは血圧を下げるお薬です。
アンギオテンシンⅡと呼ばれる、血管収縮や血液量の増加を指示するホルモンの生成を抑えます。
それにより、血管拡張作用や血圧降下作用を発揮します。
主に、犬さんと猫さんの慢性心不全症状の改善、高血圧や慢性腎不全の蛋白尿の抑制に使われます。
他にも心臓や血管の保護効果も有していることから、主に犬さんの心臓病でよく使われるお薬です。
心臓病の薬についてはこちらのページでまとめて解説しています。
アピナックの成分
アピナックには、アラセプリルという成分が含まれています。
この成分が含まれている製品として、他に人の医薬品であるセタプリルや、そのジェネリック薬もあります。
主な製品
- アピナック®錠 (6mg、12.5mg、24mg：住友ファーマアニマルヘルス株式会社)
- セタプリル®錠 (25mg：住友ファーマ株式会社)
- その他アラセプリル製剤
動物用医薬品であるアピナックが処方されることが多いですが、人用のお薬を量を調節して処方することもあります。
ただしあくまでこれは獣医師がその専門知識を使い、個々の症例に合わせて処方したものです。
自分の判断で人のお薬を飲ませないようにしましょう。
人のお薬をそのまま使ってしまうと、効果が出すぎたり、副作用が強くでてしまう可能性があります。
自宅での人のお薬の流用はNG！
アラセプリルの飲ませ方
指定された量をを、1日1～2回飲ませます。
食前、食後はどちらでも大丈夫です。
できるだけ毎日同じ時間に飲ませるようにしましょう。
猫さんが嫌がって全然お薬を飲んでくれない！なんてことも、、
そんなときはこちらも参考にしてください↓
アラセプリルを飲ませ忘れたとき
アラセプリルを飲ませ忘れてしまった場合、数時間後に気づいたならばその時にそのまま飲ませて大丈夫です。
しかし、次回の投薬が近いときには1回飛ばして次回のタイミングに飲ませてください。
忘れてしまったときでも、いつもと同じ量を飲ませてください。
焦って2倍の量を飲ませることはNG!!
副作用が強く出る可能性があります。
アピナックの副作用
アピナックの副作用として次のものがあります。これらの症状が現れたら獣医師に相談してください。
アピナックの副作用
- 低血圧、虚脱、ふらつき
- 元気消失(参考文献2)
- 食欲不振
- 腎数値 (BUN、クレアチニン) の上昇
- 肝数値の上昇
- 高カリウム血症
- 蕁麻疹、湿疹(参考文献2)
とくに初めて投与したとき、薬を増量したときはふらつきなどの副作用が出やすくなるので、しっかりと様子を見るようにしましょう。
飲ませるときに注意が必要な場合
以下に当てはまる犬さん猫さんへの投薬は注意が必要です。投薬する前に獣医師としっかり相談をしましょう。
注意が必要な場合
- 妊娠、授乳中のとき
- 肝機能障害があるとき
- 腎機能障害があるとき
- 脱水しているとき
- 副腎皮質機能低下症(アジソン病)のとき
妊娠、授乳中のとき
アラセプリルは人に対して妊婦や胎児に影響を与える可能性があることが知られています(参考文献5)。
肝機能障害があるとき
腎機能障害があるとき
薬の代謝に影響が出る可能性があります。
脱水しているとき
脱水がある状態で使用すると、腎機能が悪化してしまう可能性があります(参考文献3)。
副腎皮質機能低下症(アジソン病)のとき
副腎皮質機能低下症の症状を悪化させてしまう可能性があります。
注意が必要な飲み合わせ
次のお薬と一緒に飲むときは注意が必要です。これらのお薬を飲んでいることを獣医師に伝えて忘れていないかもう一度確認しましょう。
併用注意の薬
- カリウム保持性利尿薬
スピロノラクトン、トリアムテレン等
高カリウム血症が悪化する可能性があります。ただし、重度の心臓病犬さんや猫さんではこれらの併用が必要になることもあります。
併用注意の薬
- 副腎皮質機能亢進症改善薬
トリロスタン等
アルドステロンの抑制により、腎機能の悪化を招くことがあります(参考文献4)。
ただし、高血圧の管理のために、あえてこれらを併用することもあります。
アピナックの効果、医薬品としての承認
犬さんに対する効果
アピナックは犬さんの動物用医薬品として次の効果に承認が取られています。
アピナックの効果
僧帽弁閉鎖不全による慢性心不全に伴う症状の改善
特に、交感神経を抑制する作用もあることから、心拍数の上昇を抑える効果や、慢性心不全から発生する咳を抑制する効果も期待されています。
猫さんに対する効果
アピナックは猫さんの動物用医薬品としての承認は得られておらず、使用はすべて適応外使用になります。
アピナックの作用機序
作用機序
血圧を上げるホルモンであるアンジオテンシンⅡの生成を抑制し、それにより血圧の低下、心臓の負担の軽減をします。さらに、交感神経を直接抑制する作用もあり、それによる血管拡張作用も血圧低下、心負担の軽減に繋がります。
薬理学
アラセプリルは体内でデアセチルアラセプリルになり、末梢交感神経を直接抑制します。さらに、カプトプリルへと代謝されます。カプトプリルは、アンジオテンシンⅠからアンジオテンシンⅡへの変換を抑制します。 アルドステロン系を阻害することで、血管拡張作用、容積負荷の低下が期待され、心臓への負担を減少させます。さらに腎臓糸球体の輸出細動脈を拡張することで糸球体内圧を減少させ、蛋白尿の漏出を抑制します。
まとめ
以上、アピナックに対する説明でした。
アピナックは犬さんの心臓病に使われるお薬のうちのACEI (ACE阻害剤)に分類されるお薬です。
中でもこのお薬は直接交感神経を抑制する効果があり、他のお薬よりも心拍数の管理をしっかり行えることが期待されています。また、咳を抑制する効果も報告されており、心臓病による咳の症状の抑制を目的としても使用されることが増えてきている印象です。
血圧を下げる効果があるお薬なので、そのあたりの副作用が出てこないかしっかり注意して使っていきましょう！
まとめ
- アピナックは心不全の管理に使われるお薬
- 交感神経も調節して心拍数を管理できる
- ふらつきなどの低血圧症状に注意。
皆様の参考になれば幸いです。
- この記事は動物病院で薬を処方された飼い主様に、その薬について知ってもらうための記事です。特定の商品の使用を推奨する意図はありません。
- 飼い主様の自己判断での通販などによる薬の入手および投薬、並びに投薬の中断は一切推奨いたしません。獣医師の処方、指示に従って利用するようにしましょう。
- 適応外使用については個々の症例に合わせて、獣医師の判断のもとで使用されています。予想される効果や副作用について獣医師としっかり相談してから利用するといいと思われます。
- 薬の使用方法について獣医師一人一人考え方は違います。獣医師がここに書いてない薬の使い方をしても、それが間違っているというわけではありません。疑問に思ったらかかりつけの先生に質問してみましょう。
参考文献
- アピナック®錠添付文書、住友ファーマアニマルヘルス株式会社
- 農林水産省、動物用医薬品データベース、http://www.vm.nval.go.jp/
- 河口貴恵、ACE阻害薬、SA Medicine、EDUWARD Press、137号、4-14ページ
- アドレスタン®添付文書、共立製薬株式会社
- アンジオテンシンII受容体拮抗剤（ARB）及びアンジオテンシン変換酵素（ACE）阻害剤の妊婦・胎児への影響について、医薬品・医療機器等安全性情報 No.316、https://www.pmda.go.jp/safety/info-services/drugs/calling-attention/properly-use-alert/0002.html
各2023年1月6日取得