病院でプレビコックスやフィロコックスっていうお薬を処方されたけれども、
- プレビコックスやフィロコックスの効果は?
- 飲ませるタイミングはいつ?
- 飲ませ忘れてしまったらどうする?
- 副作用は何があるの?
そんな疑問に現役の救急獣医師がわかりやすくお答えします!
このページで解説するお薬は次の名前で呼ばれることもありますが、どれも同じお薬を表しています。
解説するお薬の一覧
- プレビコックス
- フィロコックス
- フィロコキシブ
最初に! プレビコックス、フィロコックスまとめ
成分名 | フィロコキシブ |
商品名 | プレビコックス、フィロコックス |
特徴、はたらき | 痛み止め、炎症ドメ |
使う動物 | 主に犬 |
副作用 | おう吐、下痢、食欲不振、腎機能障害等 |
注意事項 | 使用する上では定期的な健康診断が推奨されます。 |
ここから更に詳しく説明していきますよ!
特に副作用や使用上の注意は知っておいてほしいです!
プレビコックス、フィロコックスってなんのお薬? 概要説明
プレビコックスやフィロコックスは主に犬さんの痛み止めや、炎症止めに使われるお薬で、特に骨や関節等の痛みや、手術の後の痛みの管理によく使われます。
プレビコックスやフィロコックスの中には、フィロコキシブという有効成分が含まれています。
体の中で痛みや炎症を引き起こす物質を、フィロコキシブが作らせなくすることで、鎮痛や抗炎症効果を発揮します。
人の薬でいうロキソニンやカロナールと同じジャンルに分類されるお薬です。
フィロコキシブが含まれている商品
フィロコキシブが含まれている製品は次のものがあります。
これらはすべて同じお薬と思っていただいて大丈夫です。
見出しテキスト
- プレビコックス (錠剤:ベーリンガーインゲルハイム社)
- フィロコックス錠 (錠剤:共立製薬株式会社)
プレビコックス、フィロコックスの飲ませ方
指定された量を1日1回のませてください。食前、食後はどちらでも大丈夫です。
プレビコックス、フィロコックスを飲ませ忘れたとき
プレビコックスを飲ませ忘れてしまった場合、数時間後に気づいたならばその時にそのまま飲ませて大丈夫です。
しかし、次回の投薬が近いときには1回飛ばして次回のタイミングに飲ませてください。
忘れてしまったときでも2倍の量を飲ませるのはNG!副作用が強く出てしまう可能性があるので、いつもと同じ量を飲ませるようにしましょう。
プレビコックスの副作用、飲むときに気をつけるべきこと
プレビコックスは痛み止めの中でも副作用が少なくなるように作られています。
それでも服用するときに気をつけなければならないことがいくつかあるので、そこに注意して内服をしましょう。
プレビコックスの副作用
プレビコックスの副作用は次のものがあります。
プレビコックスの副作用
- おう吐、下痢、食欲不振
- 胃腸の障害
症状:元気や食欲の低下、おう吐や吐血、血便 - 腎臓の障害
症状:元気や食欲の低下、飲水量や尿量の増加や減少等 - 肝数値の上昇
症状:元気食欲の低下、粘膜の黄色化 (黄疸) 等 - 心臓の疾患や高血圧の悪化
症状:呼吸状態の悪化等 - 行動の変化
症状:無気力
プレビコックスなどの痛み止めは、痛みだけでなく、胃や腸にできた傷の回復もストップさせてしまうと考えられています。 (参考文献6)
それにより胃が荒れているときに、おう吐や下痢、食欲不振、胃腸からの出血などの症状が現れることがあります。
そのため副作用予防のために、胃腸を保護するお薬を併用することもあります。
プレビコックスはなるべく副作用が出ないように作られていますが、それでも胃腸が荒れてしまうことがあるので注意が必要です。
また、血流の減少や、血管にも影響を与える可能性があり、腎臓や心臓の病気を悪化させてしまうこともあります。
これらの症状が現れたら内服を中断し、獣医師に相談してください。
また、長期間内服をつづけると、副作用がより現れやすくなります。
長期的に服用するときには、獣医師の定期的な検診を受けるようにしましょう。
飲ませるときに注意が必要な場合
以下に当てはまる犬さん猫さんへの投薬は注意が必要です。投薬する前に獣医師としっかり相談をしましょう。
注意が必要な場合
- 繁殖、妊娠、授乳中のとき
- 体重が2.5kg未満のとき
- 生後10週間未満のときまたは、生後7ヶ月未満のとき
- 高齢で衰弱しているとき
- 消化器症状 (特に胃潰瘍など) があるとき
- 腎機能障害があるとき
- 脱水をしている時
- 肝機能障害があるとき
- 心疾患や、貧血、出血傾向、低血圧等の症状があるとき
- 繁殖、妊娠、授乳中のとき
- 体重が3kg未満のとき
- 生後10週未満の時
これらに該当するときは安全性が確認されていません。基本的に使用しては行けません。
- 生後7ヶ月未満の時
- 高齢で衰弱しているとき
副作用が強く出る可能性があるため、使用するときには十分注意が必要です。
- 消化器症状 (特に胃潰瘍など) があるとき
- 腎機能障害があるとき
- 脱水をしている時
- 肝機能障害があるとき
- 心疾患や、貧血、出血傾向、低血圧等の症状があるとき
もともとあるこれらの症状を悪化させてしまう可能性があります。
飲み合わせ
次のお薬と一緒に飲むときは注意が必要です。これらのお薬を飲んでいることを獣医師に伝えて忘れていないかもう一度確認しましょう。
これらのお薬と併用してはいけません。
これらのお薬を使っていたときは少なくとも1日は間を開けるようにしましょう。
炎症とめのお薬は1種類のみ使用が原則!
体の中での薬の効き方に影響を及ぼす可能性があります。
併用するときは、副作用が出ないか、薬の効きが弱くならないか等に注意が必要です。
プレビコックスの効果、医薬品としての承認
プレビコックスは動物用医薬品として次の効果が承認されています。
犬さんの効果
犬さんでの承認
- 変形性関節症に伴う慢性の疼痛及び炎症の緩和
- 手術における術後の疼痛の緩和
これら以外にも、がんの痛みや怪我の痛み、発熱など、様々な疼痛や炎症の緩和に使われるお薬です(参考文献2,3,4)。
猫さんの効果
プレビコックスは猫さんの動物用医薬品としての承認は取られていませんが、術後の疼痛の緩和に効果があるとの報告もあります(参考文献5)。
しかし、同様の効果で承認の取られている別のお薬(オンシオール、メタカム)があるため、そちらが使われることが多いです。
プレビコックスの作用機序
痛みや炎症を引き起こすプロスタグランジンという物質の産生を抑えることで、鎮痛、抗炎症効果を発揮します。
プロスタグランジンは、シクロオキシゲナーゼ(COX)という合成酵素から作られ、全身の痛みや炎症を強くする効果を持っています。
プレビコックスの中に含まれるフィロコキシブはこのCOXの働きを抑えることで、プロスタグランジンの産生を抑制し、痛みや炎症を抑制します。
まとめ
以上、プレビコックスに対する説明でした。
プレビコックスは痛み止めに使われるお薬のうちのNSAIDsというジャンルに分類されるお薬です。
獣医療の痛みの管理において、NSAIDsは中心的な使われ方をしているお薬です。
その中でもプレビコックスは副作用が比較的少なくなるように作られており、幅広い場面で処方されているお薬です。
- プレビコックスは痛み止めのお薬
- 1日1回飲ませる
- 副作用は少ないが、消化器症状、腎臓、肝臓に注意
- 長期投与するときには定期的な検診が必要
まとめ
皆様の参考になれば幸いです。
- この記事は動物病院で薬を処方された飼い主様に、その薬について知ってもらうための記事です。特定の商品の使用を推奨する意図はありません。
- 飼い主様の自己判断での通販などによる薬の入手および投薬、並びに投薬の中断は一切推奨いたしません。獣医師の処方、指示に従って利用するようにしましょう。
- 適応外使用については個々の症例に合わせて、獣医師の判断のもとで使用されています。予想される効果や副作用について獣医師としっかり相談してから利用するといいと思われます。
- 薬の使用方法について獣医師一人一人考え方は違います。獣医師がここに書いてない薬の使い方をしても、それが間違っているというわけではありません。疑問に思ったらかかりつけの先生に質問してみましょう。
参考文献
- プレビコックス添付文書、エランコジャパン株式会社
- 図版で理解する 犬と猫の麻酔・疼痛管理ハンドブック、EDUWARD Press、2018年
- Gruen ME, Lascelles BDX, Colleran E, et al. 2022 AAHA Pain Management Guidelines for Dogs and Cats. J Am Anim Hosp Assoc. 2022;58(2):55-76. doi:10.5326/JAAHA-MS-7292
- Mathews K, Kronen PW, Lascelles D, et al. Guidelines for recognition, assessment and treatment of pain: WSAVA Global Pain Council members and co-authors of this document:. J Small Anim Pract. 2014;55(6):E10-E68. doi:10.1111/jsap.12200
- Phuwapattanachart P, Thengchaisri N. Analgesic efficacy of oral firocoxib in ovariohysterectomized cats. J Vet Sci. 2017;18(2):175-182. doi:10.4142/jvs.2017.18.2.175
- NSAIDsとアセトアミノフェン、日本ペインクリニック学会HP:https://www.jspc.gr.jp/igakusei/igakusei_keynsaids.html
各2023年2月8日取得