病院でラプロスっていうお薬を処方されたけれども、
- お薬の効果は何?
- 副作用は何があるの?
- 飲ませるタイミングはいつ?
- 飲ませ忘れてしまったらどうする!?
そんな疑問に現役の救急獣医師がわかりやすくお答えします!
ラプロスの概要
一言解説ラプロスってなんのお薬?
猫さんの慢性腎臓病の進行を抑えるために使われるお薬です。
成分(一般名)
ベラプロストナトリウム
主な製品
主な製品
- ラプロス®錠(東レ、共立製薬株式会社)
- ドルナー®錠(20μg:東レ株式会社)
- その他ベラプロスト製剤
ラプロスは製品名で、ベラプロストナトリウムが含まれている成分の名前を表しています。
飲ませるタイミング、飲ませ忘れたときは
飲ませるタイミング
朝晩2回、食後に飲ませます。
飲ませ忘れたとき
数時間程度の前後ならば大丈夫ですが、次回の投薬が近いときには1回飛ばして次回のタイミングに飲ませるようにしましょう。
その時に飲ませる量は2倍の量飲ませるのではなく、いつもと同じ量飲ませるようにしましょう。
ラプロスの副作用、気をつけるべきこと
副作用
ラプロスの副作用の発生は基本的にそこまで多くありませんが、次のものが報告されています。
- 食欲不振
- 元気消失
- 皮内出血、消化管出血
食欲低下が認められることがあります。
他にも、血圧が下がりすぎてしまうことによる元気の消失が起こる可能性があります。
また、血栓予防効果が出すぎることによる内出血、消化管出血などの症状が出る可能性があります。
飲ませるときに注意が必要な場合
以下に当てはまる犬さん猫さんへの投薬は注意が必要です。投薬する前に獣医師としっかり相談をしましょう。
- 10ヶ月未満のとき
- 妊娠中のとき
- 出血傾向が認められるとき
- 甲状腺機能異常症があるとき
- 重度の肝障害があるとき
- 体重が7kg以上のとき
- 慢性腎不全が重度のとき(IRISステージ4のとき)
・10ヶ月未満のとき
・妊娠中のとき
安全性は確立されていないので、原則投与してはいけません。
・出血傾向が認められるとき
出血を増大させるおそれがあるため、投与に注意が必要です。
・甲状腺機能異常症があるとき
・重度の肝障害があるとき
安全性が確立されていないため、投与に注意が必要です。
・体重が7kg以上のとき、慢性腎不全が重度のとき
有効性が確認されていないため、使うか否かを獣医師としっかり相談しましょう。
飲み合わせ
次のお薬と一緒に飲むときは注意が必要です。
併用注意の薬
- 抗血液凝固薬
ワルファリン、アスピリン、チクロピジン、ウロキナーゼ、クロピドグレル、リバーロキサバンなど
併用により出血傾向を助長することがあります。
併用注意の薬
・PGI2製剤
エポプロステノールなど
・エンドセリン受容体拮抗剤
ボセンタンなど
併用により血圧低下を助長する可能性があります。
犬さんに対する薬の効果
ラプロスは犬さんの動物用医薬品としての承認は得られておらず、使用はすべて適応外使用です。
猫さんに対する薬の効果
ラプロスは猫さんの動物用医薬品として次の効果に承認が取られています。
ラプロスの効果
IRISステージ2~3の慢性腎臓病における腎機能低下の抑制及び臨床症状の改善。
IRISステージとは、国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)が提唱した慢性腎臓病の進行度を評価するための指標のこと。他にも指標はありますが、だいたい血液検査の腎数値であるCre(クレアチニン)が1.6~5.0までの猫さんがIRISステージ2~3に該当します。
こういった状態の猫さんの腎臓病の悪化やそれによる食欲低下などを防ぎ、QOLを向上させる効果が期待されます。
ラプロスの飲ませ方
体重に関係なく1回1錠を1日2回、朝晩の食後に飲ませます。
ラプロスの作用機序
ここからはラプロスに対してもうすこし詳しく説明していきます。
くわしい働き
腎臓における血栓の予防や血流の維持を行うことで、腎臓に対するダメージを減少させることで、慢性腎臓病の悪化を抑制します。
薬理学
体内でプロスタサイクリン(PGI2)という物質と同様の作用を示し、血管の筋肉や血小板のPGI2受容体を介して血管拡張作用による血流の維持、抗血小板凝固作用による血栓予防などの効果を示します。
まとめ
以上、ラプロスに対する説明でした。
比較的新しいお薬でまだデータが集まりきっていない側面もありますが、薬に反応してくれる症例も多い印象です。猫さんの慢性腎臓病に対する選択肢として個人的にはとても期待しているお薬でsy。
まとめ
- 猫さんの慢性腎臓病の進行や臨床症状を抑えるおくすり
- 慢性腎臓病の早い段階から内服する
- 副作用はそこまで多くないが、食欲不振や低血圧、出血傾向に注意
皆様の参考になれば幸いです。
- この記事は動物病院で薬を処方された飼い主様に、その薬について知ってもらうための記事です。特定の商品の使用を推奨する意図はありません。
- 飼い主様の自己判断での通販などによる薬の入手および投薬、並びに投薬の中断は一切推奨いたしません。獣医師の処方、指示に従って利用するようにしましょう。
- 適応外使用については個々の症例に合わせて、獣医師の判断のもとで使用されています。予想される効果や副作用について獣医師としっかり相談してから利用するといいと思われます。
- 薬の使用方法について獣医師一人一人考え方は違います。獣医師がここに書いてない薬の使い方をしても、それが間違っているというわけではありません。疑問に思ったらかかりつけの先生に質問してみましょう。
参考文献
- ラプロス錠添付文書、東レ株式会社
- 小動物の治療薬 第3版、文永堂出版、2020年
各2022年12月26日取得