病院でセミントラやテルミサルタンっていうお薬を処方されたけれども、
- セミントラの効果は?
- 副作用は何があるの?
- 飲ませるタイミングはいつ?
- 飲ませ忘れてしまったらどうする!?
そんな疑問に現役の救急獣医師がわかりやすくお答えします!
この記事を読むことでより安心して、安全にセミントラを使うことができるようになりますよ!
このページで解説するお薬は次の名前で呼ばれることもありますが、どれも同じお薬を表しています。
解説するお薬の一覧
- セミントラ
- テルミサルタン
- ミカルディス
セミントラってなんのお薬?概要説明
セミントラは主に犬さんと猫さんの蛋白尿や高血圧の改善に使われる薬です。
セミントラに含まれるテルミサルタンという有効成分が全身の血管を拡張させることで、血圧の降下や腎臓の保護等の効果を発揮します。
主な製品
主な製品
- セミントラ内用液(4mg/ml、10mg/ml:動物用医薬品) (ベーリンガーインゲルハイム社)
- ミカルディス錠(40mg、80mg:人医薬品)(ベーリンガーインゲルハイム社、アステラス製薬)
- その他テルミサルタン製剤(人医薬品)
主な製品として、動物用医薬品のセミントラという液体のお薬があります。
基本的には動物用医薬品であるセミントラが処方されますが、それ以外にも人体用医薬品のテルミサルタン製剤を錠剤や粉で処方されることもあります。
セミントラは飲みやすく作られており、猫さんも比較的すんなり飲んでくれます
セミントラの飲ませ方、飲ませるタイミング
指定された量を1日1回、液体を直接口の中に入れるか、少量のご飯に混ぜて一緒に食べさせてください。
飲ませるタイミングは食前、食後どちらでも大丈夫です。
ただし、食前ならば食前、食後ならば食後とタイミングを決めた方が良いです。
普段食後に飲んでいる子が食前に飲むと、効果が出すぎる可能性があります(参考文献5)。
セミントラを飲ませ忘れたとき
セミントラを飲ませ忘れてしまった場合、数時間後に気づいたならばその時にそのまま飲ませて大丈夫です。
しかし、次回の投薬が近いときには1回飛ばして次回のタイミングに飲ませてください。
忘れてしまったときでも2倍の量を飲ませるのはNG!
副作用が強く出てしまう可能性があるので、いつもと同じ量を飲ませるようにしましょう。
セミントラの副作用、気をつけるべきこと
セミントラは動物用医薬品として安全性が確認されていますが、気をつけるべき点がいくつかあります。
おうちの子が該当しないかチェックしておきましょう。
副作用
セミントラの副作用は次のものが報告されています。
セミントラの副作用
- 嘔吐
- 軟便、下痢
- 肝酵素の上昇
- 尿素窒素(腎数値)の上昇
- 虚脱、ふらつき
- 赤血球減少
特に、脱水している状態で使用してしまうと、腎臓に逆にダメージを与える可能性があります。腎数値が上昇してしまわないか定期的なモニタリングが必要なお薬です。
これらの症状が現れたときはもちろん、これら以外でもいつもと違う症状が現れたときは獣医さんに相談しましょう。
飲ませるときに注意が必要な場合
以下に当てはまる犬さん猫さんへの投薬は注意が必要です。投薬する前に獣医師としっかり相談をしましょう。
注意が必要な場合
- 年齢が6ヶ月未満のとき
- 体重が2kg未満のとき
- 妊娠中、授乳中のとき
- 高カリウム血症があるとき
- 蛋白尿がない慢性腎不全であるとき
- 脱水があるとき
- 慢性腎不全の末期である時
- 急性腎不全である時
- 年齢が6ヶ月未満のとき
- 体重が2kg未満のとき
- 妊娠中、授乳中のとき
安全性が確認されていないため、使用は推奨されません。
特に、テルミサルタンは妊婦や胎児に影響を与える可能性があることが知られています(参考文献2)。
- 高カリウム血症があるとき
カリウムが上昇する可能性があるため、慎重な投与が必要です。
- 蛋白尿がない慢性腎不全である時、脱水があるとき
あくまで蛋白尿に対する薬であり、それ以外の慢性腎臓病に使うと症状が悪化してしまう可能性があります。
特に脱水があると腎機能が悪化してしまうリスクが上がります(参考文献3)。
- 慢性腎不全の尿毒症末期や、急性腎不全である場合
この病態の猫さんに対しての有効性や安全性は確認されていません。場合によっては症状が悪化してしまう可能性があります。
飲み合わせ
次のお薬と一緒に飲むときは注意が必要です。これらのお薬を飲んでいることを獣医師に伝えて忘れていないかもう一度確認しましょう。
飲み合わせの悪いお薬
- 非ステロイド性消炎鎮痛剤
ロベナコキシブ、メロキシカム、インフラカム等
お薬の血圧降下作用が減弱することがあります。
慢性関節炎等、痛みがあるときによく処方されているお薬なので気をつけましょう。
飲み合わせの悪いお薬
- 他の血圧降下剤
アムロジピン、ベナゼプリル、エナラプリル等
血圧が下がりすぎてしまう可能性があります。ただし、重度の高血圧の犬さんや猫さんではこれらの併用が必要になることもあります。
飲み合わせの悪いお薬
- 副腎皮質機能亢進症改善薬
トリスタン等
腎機能の悪化を招くことがあるため、使用には注意が必要です(参考文献4)。
ただこの場合も、高血圧の管理のためにお薬を併用が必要になるときもあります。
クッシング症候群と言われた子は注意が必要です。
犬さんに対する薬の効果
セミントラは犬さんの動物用医薬品としての承認は得られていません。
ただ、適応外使用にはなりますが、高血圧やそれに関連した蛋白尿の治療のために処方されることもあります。
猫さんに対する薬の効果
セミントラは猫さんの動物用医薬品として次の効果に承認が取られています。
セミントラの効果
- 慢性腎臓病のときの蛋白尿の抑制
- 全身性高血圧の治療
セミントラの作用機序
薬理学的には、血管の中にあるアンジオテンシンタイプ1受容体に結合することで、アンジオテンシンⅡの作用を阻害することで、レニン・アンジオテンシン系の抑制を行います。
これにより血管収縮作用を抑制することで血管が拡張し、全身の血圧の全身の血圧を下げます。
また、腎臓の中の血管の圧力を下げることで蛋白尿の発生も抑制します。高血圧や蛋白尿は慢性腎臓病の進行を進めるリスク因子として知られており、これらを改善することは腎臓の保護に繋がります。
まとめ
以上、セミントラに対する説明でした。
猫さんの慢性腎不全に対処できる数少ないお薬です。ただし使い方を間違えてしまうと腎臓に更にダメージを与えてしまう可能性があるので、使用するには注意が必要なお薬という印象です。
まとめ
- 蛋白尿や高血圧を抑制するおくすり
- 慢性腎臓病だからと容易に使用すると状態が悪化する可能性があります
- ふらつきなどの低血圧症上に注意
皆様の参考になれば幸いです。
- この記事は動物病院で薬を処方された飼い主様に、その薬について知ってもらうための記事です。特定の商品の使用を推奨する意図はありません。
- 飼い主様の自己判断での通販などによる薬の入手および投薬、並びに投薬の中断は一切推奨いたしません。獣医師の処方、指示に従って利用するようにしましょう。
- 適応外使用については個々の症例に合わせて、獣医師の判断のもとで使用されています。予想される効果や副作用について獣医師としっかり相談してから利用するといいと思われます。
- 薬の使用方法について獣医師一人一人考え方は違います。獣医師がここに書いてない薬の使い方をしても、それが間違っているというわけではありません。疑問に思ったらかかりつけの先生に質問してみましょう。
参考文献
- セミントラ®錠添付文書、ベーリンガーインゲルハイム社
- 医薬品・医療機器等安全性情報316号、厚生労働省、https://www.jsnfs.or.jp/news/news_20141002.html
- 伴侶動物治療指針Vol9、緑書房
- アドレスタン®添付文書、共立製薬
- 製品Q&A ミカルディス、ベーリンガーインゲルハイム社:https://pro.boehringer-ingelheim.com/jp/product/micardis/q-and-a-is-it-affected-by-my-diet
各2022年12月29 日取得