毎月飲ませることで犬さんや猫さんをフィラリアから守ってくれる予防薬。
しかし、飲ませる量を間違えたり、遺伝的に弱かったりすると、副作用が現れてフィラリア予防薬中毒になることも、、、!
この記事ではそのフィラリア予防薬中毒について、現役の救急獣医師が詳しく解説いたします!
- フィラリア予防薬中毒とは
- 動物病院を受診すべきタイミング
- フィラリア予防薬中毒の症状
- フィラリア予防薬中毒の治療法
この記事でわかること
この記事を読むことで、フィラリア予防薬中毒が疑われるときに、より適切な対処ができるようになります。
それでは本題にいきましょう!
フィラリア予防薬中毒って何?
フィリアの予防薬には、イベルメクチンや、ミルベマイシン、モキシデクチンなどの成分が含まれています。
これらのお薬は、基本的には動物用医薬品として、その安全性が確認されています。
しかし、誤って大量に飲ませてしまった場合、もしくはコリー犬などのイベルメクチンに対する感受性が高い犬さんの場合は中毒症状が現れる可能性があります。
病院に来るべきタイミング
- フィラリア予防薬を誤って大量に飲ませてしまった
- フィラリア予防薬を飲ませてから様子がおかしい!
そんな場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
どれくらいの量で危険なの?
フィラリア予防薬の一つである、「イベルメクチン」という薬を例に上げると、
イベルメクチンの中毒量
- 子犬・子猫なら、体重1 kgあたり、0.3 mg以上で中毒の危険
- 大人の猫なら、体重1 kgあたり、0.5 mg以上で中毒の危険
- 大人の犬なら、体重1 kgあたり、2 mg以上で中毒の危険、40 mg以上で命の危険
- コリー系の高感受性の犬なら、体重1 kgあたり、0.1 mgで中毒の危険
となっています。
通常のフィラリア予防使う容量は体重1 kgあたり、0.01 mg程度なので、通常の使用で問題が出ることはほとんどありません。
フィラリア予防薬を個人輸入して使ったときに用量を間違えて使ってしまうなんてことも
フィラリア予防薬中毒の症状
フィラリア予防薬中毒を引き起こしてしまった場合は次の症状が現れる可能性があります。
注意ポイント
- 運動失調、ふるえ
- 発作
- 瞳孔の散大、視角の喪失
- 行動の変化、攻撃性の増加
- よだれ
- 意識状態の低下、昏睡 等
これらの症状が現れたらすぐに病院に連絡しましょう。
治療
フィラリア予防薬中毒には特別な治療法や、拮抗薬などがありません。
なので基本的には
- 吐かせて、体から取り除く
- 点滴などの対症療法を行う
といった治療を行い、体が回復することを補助する治療を行います。
催吐処置、胃洗浄
フィラリア予防薬を摂取してから2時間以内ならばまた、薬が体に吸収されていない状態ですので、
まずは吐かせたり、胃の洗浄を行うことにより、原因物質の除去を行います。
他にも、薬用炭などの毒素の吸着剤なども使うことがあります。
摂取してから時間が経った場合、催吐処置は行わずに次に説明する対症療法を行っていくことになります。
基本的な治療は入院しながらの点滴
点滴を行い全身の循環を良くし、薬を希釈します。
また、脂肪乳剤と呼ばれる脂肪分が多く含まれる点滴を使うこともあります。
治療期間は長期になることも
イベルメクチンは体の中に長く残る薬として知られています。(半減期が2日ほど)
ですので、回復までに長時間が必要になることがあります。
1週間以上の入院が必要になることもしばしばあります。
中には7週間昏睡状態が続いた犬さんもいるようです
まとめ フィラリア予防薬中毒が疑われる場合にはすぐに病院に連絡を!
この記事では、イベルメクチンやミルベマイシンなどの、フィラリア予防薬中毒について解説しました。
一言で言えば、「怪しいと思ったらすぐに動物病院に連絡をする」に尽きるのですが、もう少し詳しく内容をまとめると次のようになります。
- フィラリア予防薬中毒はふらつきやふるえ、よだれなどの神経症状が現れる
- 様子がおかしいと思ったらすぐに病院を受診すべき
- 基本的には点滴による対症療法
- 摂取してすぐならば吐かせる処置なども可能
- 中毒症状は回復するまでに長期間かかる
最後まで読んでいただきありがとうございました。
この記事を活かして、愛犬と安心安全な生活を送りましょう!
参考文献
伴侶動物のための救急医療,ELSEVIER社