「処方されたお薬をうちの子が全然飲んでくれない!」
そんな声を飼い主様からよく聞きます。
本当にその通り!
猫さんにお薬を飲ませることは超難しい!
くすりなんて大きらいだ~
この記事では、
- お薬を全然飲んでくれない!
- ネットに書いてある方法を試したけど暴れてしまう!
- ストレスなくお薬をのませたい!
- お薬のあげ方動画に出てくる猫さんは大人しすぎて参考にならない!
そういった方々へ向けて、
動物病院で毎日お薬を飲ませている私が
猫さんにお薬を飲ませるための
- 心構え
- あらかじめ準備すること
- お薬をあげる手順
についてお伝えします!
楽しくお薬が飲める方法を探す
猫さんにお薬を飲ませるぞ!!と意気込む前に、
まずは嫌がらずに飲んでくれる方法を探しましょう。
ボクが楽におくすりを飲めるようにしてくれ~
猫さんにご機嫌に飲んでもらう方法として、次の3つがあります。
ご機嫌に飲んでもらう方法
- 錠剤を粉や液体に変更する
- おやつや投薬補助食品に混ぜてみる
- 他のタイプのお薬がないか動物病院に聞いてみる
錠剤を粉や液体に変更する
お薬が錠剤のままだと、猫さんは違和感に気づきやすくなります。
口の中に隠していて、後になってこっそり吐き出していた、、、
あるあるですね!
そんな場合は錠剤のお薬を小さく分割したり、粉にして
- ご飯に混ぜ込む
- 水やオリーブオイルなどの液体に溶く
などを試してみることですんなり飲んでくれることがあります。
お薬の分割や粉砕にはこういったピルクラッシャーを利用すると便利ですよ
注意ポイント
錠剤のお薬を粉や液体にするときは、一度かかりつけの獣医師に相談してから行うようにしましょう。
お薬の種類によっては粉にしたり油に溶いたりすると
効果が弱くなったり、副作用が強く出たりすることがあります。
また、中には粉を吸ってしまった場合に、飼い主様の健康に影響が出るお薬もあります。
とくにホルモンのお薬やがん関係のお薬は粉末化NGが多いです。
おやつや投薬補助食品に混ぜる
ちゅーるなどのトロトロのおやつや投薬補助食品に混ぜることで一緒におやつ感覚で食べてくれることもあります。
色々な会社から様々な投薬補助食品が出ていますし、
動物病院では投薬専用のねっとりとしたチュールが売っています。
これらを一つずつ試してみてもいいでしょう。
投薬補助食品としては、私の病院ではメディボールという商品をオススメしています!
お薬をしっかり包んでくれるのでうちの猫さんも騙されてよく食べてくれますよ!
他の製剤があるか病院に聞く
同じお薬でも製品によっては飲みやすいように香りがついていたり、
逆に香りが一切ない無味無臭タイプであったり味にバリエーションがあります。
違う味付けのお薬を試してみるとスルッと飲んでくれることもありますよ。
それでも飲んでくれないときは
液体にしても、おやつに混ぜても飲んでくれない。
そうなってくるとお薬を直接飲んでもらう必要が出てきます。
ここからは猫さんにお薬を直接飲んでもらう方法について次の3つのステップでお伝えします!
お薬を飲んでもらう方法
- お薬をあげるための準備と心構え
- 猫さんのお薬の嫌がり方について
- 具体的な手順
準備と心構え
猫さんに直接お薬を飲ませる前に、必要な下準備と心構えを行いましょう。
気をつけてほしい点は次の5つです!
心構えと下準備
- 覚悟を決める
- 緊張しすぎない
- 声を掛けながら行う
- できれば2人以上で行う
- おやつで練習する
覚悟を決める
お薬を猫さんに飲ませると決めたならば、
「一瞬で終わらせる」という覚悟を決めましょう。
かわいそうだから、動いちゃうからといって
中途半端に加減して時間がかかってしまうと猫さんはもっとストレスを感じてしまいます。
私達も自分が病院で採血されるとき、
看護師さんが「注射痛そうだなぁ~」と言いながら針で皮膚をツンツンしてきたら
「いいから早くしてくれよ!!!」ってなりますよね。
中途半端に行うことが一番かわいそうという気持ちを持ちましょう!
嫌なことは一瞬で終わらせてあとは楽しく!
緊張しすぎない
先程「覚悟を決めろ」と言いました。
しかし覚悟を決めたはいいものの、私達がガチガチに緊張してしまうと
それを機敏に察知して猫さんも怖くなってしまいます。
気合の入ったご主人はゼッタイ何かを企んでいる…
あまり気負いすぎずにリラックスすることを意識してみましょう。
お薬を準備して、まずは深呼吸。
そして自然体で一緒にいるときにささっと飲ませあげましょう。
もしもこちらの緊張を察知されてしまったら、
猫さんが落ち着くまで時間をあけることも有効です。
お薬をあげる段階で嫌がられてしまったときも、
しばらく休憩を挟んでみるとすんなり飲んでくれることもあります。
声をかけながら行う
猫さんに対する優しい声掛けもとても大切です。
集中すると、どうしても無言で作業しがちになってしまします。
無言で近づくご主人はこわい~
「すごいね」「おりこう~」などと声をかけながらすることで、飼い主さんと猫さん両方の緊張が緩和できますよ。
いつも遊んであげるときと同じ声でお話してあげましょう!
できれば2人以上で
お薬を飲ませるときは
抱っこして支える人と薬をお口に入れる人
それぞれ仕事を分担して専念することでより素早く終わらせることができます。
動物病院でも抱っこする人と飲ませる人の分業制が取られていることが多いですよ
まずはおやつで練習
お薬を飲ませてみる前に、まずは好きなおやつを、お薬の飲ませ方で食べさせてあげる練習をしましょう。
お薬を飲ませるときだけ猫さんを捕まえて、口を開けて、、
そんなことをしていると捕まること、口を触られることが大嫌いになってしまします。
お薬→お薬→お薬→お薬→… よりも
おやつ→おやつ→お薬→おやつ→…のほうが絶対楽しいですよね。
いつも貰えない特別に大好きなおやつを練習に使うとより効果的ですよ
時間に余裕がある場合
時間に余裕があるならば日常的に
タオルで巻けたらおやつをあげる→終了
顔を触らせてくれたらおやつ→終了
など、一つずつの動作とおやつを結びつけて、嫌になる前に終了するというスキンシップをとっておくといいでしょう。
毎日の積み重ねでそれぞれの動作に対する嫌悪感を減らすことを目指しましょう
猫ちゃんの抵抗方法を知りましょう
このページを見ている方はお薬を飲ませるときに
やめてくれぇ~ ゲシゲシ(鬼キック)
と抵抗されてしまっていると思います。
お薬をあげるときに猫さんに抵抗されたらどうすればいいのでしょうか。
結論から伝えますと、
猫さんに抵抗されてしまったら勝ち目はありません。失敗です。
抵抗体勢の猫さんには、人間の力では勝つことはできません。
そして何よりも猫さんと戦って力で押さ込むというのはあまりにもかわいそうですし、
今後の関係性に悪影響が及んでしまうことも。
それではどうすればいいのかというと、
あらかじめ猫さんに抵抗されないように対策を行い、
ありゃりゃ、これは動けないぞ…
と諦めてもらうことを目指しましょう。
暴れて無理やり押さえつけるのではなく、最初から諦めてもらうこと。
そして諦めてもらった状態から一瞬でお薬を飲ませ終わること。
そちらのほうが猫さんの体に負担はかかりませんし、ストレスが少なくお薬をあげられるようになります。
それでは具体的に猫さんがもっている抵抗方法について一つずつ見ていきましょう。
パンチ、キック
猫さんの攻撃方法といえば、猫パンチや猫キック。
その威力は皆様御存知ですね。
猫さんは手足が器用なのでこれらを使ってお薬や我々の手を払い除けます。
なのでパンチやキックをされてしまう前に
パンチできなさそうだなぁ
と思ってもらうことが大切でしたね。
そのためには「タオルで巻くこと」が一番効果的です。
詳しいやり方は後ほど説明いたします。
後ずさり
猫さんは抱っこから逃げるときは基本的に後ずさりからはじまります。
手足を駆使して後ずさりをして、スッポ抜けたらダッシュで逃げる。そんな感じです。
抱っこする係の人は猫さんの真後ろに陣取って後ろに下がれないようにしましょう。
一人のときは後ろから包み込むように抱っこしてあげるといいでしょう。
また、先程と同じく「タオルで巻く」ことは後ずさり対策としても効果ありですよ。
首振り、かみつき
いざお薬を飲ませる段階では、顔に近づいてきたものを首を振って嫌がる。
そして最終手段は噛みつき攻撃!
これもお薬をあげるときによく見られる光景ですね。
これに対しては猫さんのお顔をしっかりと支えてあげましょう。
最初にお顔をしっかりと持つことで
あぁ、頭も動かせなさそうだなぁ
と思ってもらうことで首振り動作を諦めてもらうことができます。
ちゃんとしたところを持ってあげることができれば痛くはなりません。
しっかり支えて一瞬でお薬を飲ませるようにしましょう。
具体的なやり方は次の所でお話します。
実際にお薬を上げる手順
さて、下準備と心構えできたところで、
実際の手順を紹介します。
お薬をあげる手順
- タオルでしっかりと巻く
- 高い台に載せる
- しっかりと支える
- お薬を入れる
- 水を飲ませる
- たくさん褒める
それでは実際の手順について一つづつ見ていきましょう。
1.タオルでしっかりと巻く
まずはバスタオルで猫さんをしっかりと巻いてあげます。
次の点に気をつけることでよりきれいに巻くことができます。
- 手足を折り曲げて体に密着させる
- お顔以外がすべてタオルに包稀ている状態にする
- ピタッとキツめにタオルを巻く
コツ
これらを気をつけることで、安定してタオルで巻くことができますよ。
逆に次の状態だとタオルで巻く意味があまりなくなってきてしまいます。
- ゆるく巻いて猫さんが動けるスペースが有る
- 手足が伸びている状態で巻いてしまう
悪い例
ゆるいと、結局隙間から手が出て逃げ出してしまいます。
手足が伸びている状態で巻いてしまっても、手足を曲げることで動くスペースができてしまいます。
きつめに巻くことは少しかわいそうに感じるかもしれませんが、
猫さんは体全体が何かに包まれている方が落ち着くと言われていますので、ピタッと巻いて問題ありません。
何回も繰り返しますが、ゆるく巻いて抵抗されるより、
抵抗されない状態で一瞬で終わらせるほうがストレスが少なくすみます。
注意ポイント
関節が悪い、体が痛い猫さんの手足を無理に曲げると
痛めてしまう可能性があるので、そういった猫さんは注意しましょう。
2.高い台に載せる
高い台に乗せることで抱っこするときの安定感が増します。
床で作業をするよりも机の上で作業したほうが作業しやすいですよね。そんなイメージです。
高さは自分の体格に合わせて色々試してほしいのですが、縦型洗濯機くらいの高さがちょうどいい事が多いです。
猫さんの行動も少し制限されて抵抗を諦めやすくなることも。
3.しっかり支える
猫さんが動かないようにしっかりと支えてあげます。
抱っこする係の人の支え方
- 後退りできないように後ろから猫さんをしっかりと支えます。
- 利き手で下顎を支えてあげて、正面を向かせます。
お薬を飲ませる人の支え方
- 利き手と逆の手で猫さんの頬骨をしっかりと持ち、頭を支えます。
- そのまま猫さんのお顔を自分の顔の向きまで持ち上げます。
頬骨の部分は安定しているのでよほど強く握り潰さなければ苦しくないので
上からガバっと掴むイメージでしっかりと持ちましょう。
ここを持つ力がゆるいと首を振られて簡単に抵抗されてしまいますよ。
注意ポイント
頭を素早く動かすと猫さんは嫌がり、抵抗がより強くなります。
猫さんの首の力に合わせてゆっくりと頭を動かすようにしましょう。
4.お薬を入れる
錠剤の場合
- 錠剤を人差し指と親指でつまんで持ちます。
- 中指を使って下顎を下げて口を開けます。
- お口の中が見えたら舌の奥の方にすっと錠剤を入れます。
- そのままお口を閉じて少し上を向いてもらいます。
- 喉の下のところを軽くマッサージして飲み込みを補助します。
コツは舌の奥の方にしっかりと入れることです。
手前に入れただけだと簡単に吐き出されてしまいますよ。
投薬補助器具もとても有効ですよ!
液体の場合
- シリンジにお薬を入れた状態で用意します。
- 猫さんの犬歯 (牙)の後ろ側にシリンジの先端を差し込みます。
- 一瞬猫さんの口が開くので、そのスキに液体をお口の中に入れます。
液体の場合は一度に入れる量は1ml程度にし、
液体が多い場合は何回か分けて飲ませるようにしましょう。
5.水を飲ませる
お薬をいれたら5ml位を目安にお水を飲ませましょう。
口の中に隠し持っているお薬を流し込む効果と、
お薬を胃までしっかり落として食道炎になるリスクを減らす効果があります。
シリンジを使って閉じているお口の横から少しずつお水をいれましょう。
シリンジは動物病院でお願いすれば貰えますよ。
6.たくさん褒める
終わったらたくさん褒めてあげて、余裕があればそのままおやつもあげましょう。
お薬を飲む動作を嫌な気持ちだけで終わらせると、次回以降が更に難航してしまいます。
少しでもいい思い出を残してもらうようにしましょう。
何をやっても飲んでくれない場合
正直な話、ここまでの一連の流れをやってもお薬を飲んでくれない猫さんはたくさんいます。
そんな子達と喧嘩同然にお薬を飲ませ続けるというのはあまりにも辛いですよね。
そんな場合は「頑張っても無理」と素直に動物病院に相談してみましょう。
お薬の種類にもよりますが、別の方法を提案できるかもしれません。
まとめ~猫さんにお薬を飲ませる方法~
以上、猫さんにお薬を飲ませる方法について伝えてきました。
こうした中で一番障害になるものは「苦手意識」だと思います。
苦手意識があると緊張して、それを察知した猫さんが暴れてしまう。
そして失敗してさらに苦手意識を持ってしまう。そんな悪循環に陥ってしまいかねません。
準備をしっかりして、安全にストレスなくお薬を飲めるようにしていきましょう!
また、正直な話、何をやってもおくすりが飲めない猫さんというのは一定数います。
そんな場合は「頑張っても無理」と素直に動物病院に相談してみましょう。
他の方法を提案したりできるかもしれません。
- 覚悟を決める
- 緊張しすぎない
- 声を掛けながら行う
- できれば2人以上で行う
- おやつで練習する
心構えと下準備
- タオルでしっかりと巻く
- おやつをあげる
- 高い台に載せる
- 頭をしっかりと支える
- お薬を入れる
- 水を飲ませる
- たくさん褒める
お薬を飲ませる手順