病院でボミットバスター、プリンペランっていうお薬を処方されたけれども、
- 効果は何?
- 副作用は何があるの?
- 飲ませるタイミングはいつ?
- 飲ませ忘れてしまったらどうする!?
そんな疑問に現役の救急獣医師がわかりやすくお答えします!
このページで解説するお薬は次の名前で呼ばれることもありますが、どれも同じお薬を表しています。
このページで解説するお薬の別名
- メトクロプラミド
- ボミットバスター
- プリンペラン
メトクロプラミドの概要
一言解説メトクロプラミドってなんのお薬?
メトクロプラミドは犬さんと猫さんの嘔吐の抑制や食欲不振の改善に使われるお薬です。
成分(一般名)
塩酸メトクロプラミド
主な製品
主な製品
- ボミットバスター®錠(5mg:リケンベッツファーマ株式会社)
- プリンペラン®錠(5mg:日医工株式会社)
- その他メトクロプラミド製剤
ボミットバスター、プリンペランが製品名で、メトクロプラミドが含まれている成分の名前を表しています。
基本的には動物用医薬品であるボミットバスターが処方されることが多いですが、人間用のお薬が量を調節して処方されることもあります。
人のお薬をそのまま使ってしまうと、効果が出すぎてしまう可能性があるので、自宅では絶対流用しては行けません。必ず獣医師の処方のもとで使うようにしましょう。
メトクロプラミドを飲ませるタイミング
定められた量を1日1~2回、飲ませてください。
タイミングは食前、食後どちらでも大丈夫です。
ただし、人用のプリンペランが処方されているときは1日3~4回飲ませます。
メトクロプラミドを飲ませ忘れたとき
数時間後程度の前後ならば大丈夫ですが、次回の投薬が近いときには1回飛ばして次回のタイミングに飲ませるようにしましょう。
忘れてしまっても次に飲ませる量はいつもと同じ量飲ませるようにしましょう。まちがっても2倍の量飲ませてはいけません。
メトクロプラミドの副作用、気をつけるべきこと
副作用
メトクロプラミドの副作用の発生は基本的にそこまで多くありませんが、次のものが報告されています。
- 手足や頭のふるえ、よだれ、運動失調等
脳に対しても効果を示すことがあり、錐体外路症状と呼ばれるふるえなどの症状が出ることがあります。
飲ませるときに注意が必要な場合
以下に当てはまる犬さん猫さんへの投薬は注意が必要です。投薬する前に獣医師としっかり相談をしましょう。
- 魚に対してアレルギーを持っているとき
- 体重が小さい時
- 授乳中のとき
- 異物誤食など消化管閉塞などが疑われるとき
- 黒色便や吐血など、消化管出血が疑われるとき
魚系の食材に対してアレルギーを持っているとき
ボミットバスター®錠はフレーバーに魚が使用されているので、アレルギーの症状が現れる可能性があります。
授乳中のとき
母乳に薬の成分が移行する可能性があり、子供に影響が出る可能性があります。
消化管閉塞が疑われるとき
消化管に穴が空いてしまう危険性があります(参考文献2)。
消化管出血が疑われるとき
出血を助長する可能性があるため、慎重な利用が必要です(参考文献3)。
飲み合わせ
次のお薬と一緒に飲むときは注意が必要です。
併用注意の薬
- 抗精神薬
ハロペリドール(セレネース)、クロルプロマジン(コントミン)等
ふるえやよだれなどの副作用が出やすくなる可能性があります(参考文献2)。
メトクロプラミドの効果、医薬品としての承認
犬さんに対する効果
メトクロプラミド(ボミットバスター)は犬さんの動物用医薬品として次の効果に承認が取られています。
メトクロプラミドの効果
犬:胃腸炎に伴う嘔吐、食欲不振、駆虫剤投与時の嘔吐
プリンペランなどの他のメトクロプラミド製剤でも同様の効果が期待されます。しかしこれらは人用の医薬品であり、適用外使用になりますので、使用の際は獣医師とよく相談した上で使用するようにしましょう。
ボミットバスターは1日1回からの投与回数で大丈夫ですが、
他のメトクロプラミド製剤は基本的に1日3回の投与回数が必要になります(参考文献4)。
猫さんに対する効果
メトクロプラミド(プリンペラン)は猫さんの動物用医薬品として次の効果に承認が取られています。
メトクロプラミドの効果
胃腸炎に伴う嘔吐、食欲不振
犬さんと同様に他のメトクロプラミド製剤でも同様の効果が期待されます。しかしこれらは人用の医薬品であり、適用外使用になりますので、使用の際は獣医師とよく相談した上で使用するようにしましょう。
メトクロプラミドの投与量
ボミットバスターでは
犬:体重1kgあたり 0.125~2mg
猫:体重1kgあたり 0.4~2.5mg
をそれぞれ1日1~2回経口投与
猫さんのほうが少し高用量で処方されます。
メトクロプラミドの作用機序
ここからはメトクロプラミドに対してもうすこし詳しく説明していきます。
作用機序
嘔吐を引き起こす脳の一連の反応を抑えます。また、消化管の運動を促進し、内容物の停滞を抑えることで嘔吐や食欲不振を改善します。
薬理学
中枢神経系ではドパミンD2受容体を遮断することで、嘔吐中枢の化学引き金受容体の働きを減弱させることにより嘔吐を抑制します。
消化管に対してもドパミンD2受容体を遮断することで、アセチルコリンの遊離を促進して消化管の運動を促進します。消化管の運動の効きすぎてしまったブレーキを解除してあげるイメージです。
まとめ
以上、メトクロプラミドに対する説明でした。
嘔吐や食欲不振に対してよく使われるお薬です。モサプリドとメトクロプラミドとを併用することでさらなる効果を期待され、一緒に処方されることもよくあります。
まとめ
- メトクロプラミドは嘔吐や食欲不振のお薬
- 副作用はそこまで多くないが、ふるえなどの症状に注意が必要
- 異物が詰まっている可能性があるときは悪化の可能性があるため注意が必要
皆様の参考になれば幸いです。
- この記事は動物病院で薬を処方された飼い主様に、その薬について知ってもらうための記事です。特定の商品の使用を推奨する意図はありません。
- 飼い主様の自己判断での通販などによる薬の入手および投薬、並びに投薬の中断は一切推奨いたしません。獣医師の処方、指示に従って利用するようにしましょう。
- 適応外使用については個々の症例に合わせて、獣医師の判断のもとで使用されています。予想される効果や副作用について獣医師としっかり相談してから利用するといいと思われます。
- 薬の使用方法について獣医師一人一人考え方は違います。獣医師がここに書いてない薬の使い方をしても、それが間違っているというわけではありません。疑問に思ったらかかりつけの先生に質問してみましょう。
参考文献
- ボミットバスター錠添付文書、リケンベッツファーマ株式会社
- プリンペラン錠添付文書、日医工株式会社
- モサプリドと消化管運動改善薬SA Medicine、138号、10-15頁
- 1次診療病院における嘔吐治療,奥田英令
- 獣医医療開発株式会社 ボミットバスター錠、http://www.vmdp.jp/products/vomitbuster/vomitbuster.html
各2023年1月5日取得